視る力と造る力、そして決める力(松陽高校美術科の皆さんと)

5月18日から数回に分けて、鹿児島県立松陽高等学校美術科で彫塑のモデルをしてきました。

モデルを見ながら作る時間といない間に出来ることをする時間をとるそうで、

今回はここでモデルのお仕事はおしまい。

皆さん、熱心に作られていました。

今年の高校美術展や、来年の県美展などに出展される作品になるかもしれないそうです。

 

3年生は、彫塑を選択した、実際にこの道を選ぼうとしている生徒さんたち。

2年生は、モデルを見ながら作るのは初めてだけれど、素描の訓練を1年続けて来た生徒さんたち。

1年生は、志を持って美術科に挑み、そして選抜された精鋭たち。初めて触る粘土に緊張しながらも必死で食らいついていた。

私を物体としてしっかりと見て取ろうとしてくれている情熱は、何にも代え難いエネルギーとなりました。

そして、またこの粘土の世界、彫塑家の田原迫華先生が生徒さんたちへ指導する言葉や姿から面白さを感じました。

一度作った箇所を何か違うと削ってしまうと、本当に何もなかったことになってしまう。

絵ならば、うっすらと跡が残るかもしれない、けれど粘土ならもうそこにはなにもないゼロ。

どんなに迷って、粘土を触り続けても、

この形に向かって進むんだという意志がなければ、粘土は作品として存在するものにならない。

ただの塊。

構成を決めてください。

その意志をどうすると何時間かけて迷ったとしても、今すぐその構成に向かって進む5分でも

結果は同じ。ならば今すぐ決めて!

華先生のお話は、粘土だけでなく、何かしらの作品を作ろうとするものにとって普遍性のあることだと思いながら聞かせていただいておりました。

とても勉強になりました。

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たくさんのワタシに囲まれました なんとなく、それぞれの作り手さんと似てくるというのが定理のようです。
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こんな風に囲まれて 制作は行われています
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2年生の皆さんと。力作です。

3年生の皆さんとは、実は写真を撮ることは憚られ、残念ながらありません。

モデルがいる間に作品と確と対峙したいという気持ちが授業の間中張り詰めたような緊張感として伝わってきていました。

終業のチャイムとともに解けるかと思われたその緊張感は、不思議と何か美しい糸として張り巡らされたものとして残り、

彫塑室を静謐な空気で満たしていて、私は写真を撮るというのはそれらを汚すような行為に思えて避けたかったのです。

いつか必ずどこかの展覧会でその作品たちに出会えるときを楽しみに

ただ挨拶を交わしお別れしました。

とても素晴らしいお仕事をさせていただきました。

松陽高校美術科の彫塑をされた皆さん、

田原迫華先生、

ありがとうございました!

madoka